不安なぼくに、ヘッドライトの光を照らし続けてくれたタクシー運転手さん


それは、25歳のときに起きた出来事だった。

大学を卒業した僕は、実家の近くで一人暮らしをして社会人生活を送っていた。

そんな平凡な毎日のなか、起こったひとつの出来事。

いつものように眠りに就こうとしたとき、
ふと電話が鳴った。
母親からだった。

「こんな時間に何の用だろう。」
 
電話に出てみると
親父が倒れた・・・と。
かなりの重病らしい。

一瞬、目の前が真っ暗になった。

僕はとっさに家を飛び出し
タクシーを捕まえて病院へと向かった。

『親父が倒れたんです。 急いで病院まで向かってください。』

僕は一刻も早く病院へ向かいたかった。

『わかりました。急いで向かいましょう。』
『お父さんは無事だと信じましょう。』

そんな運転手の言葉が、少し安心感を与えてくれた。
全く他人の運転手だったけど。

一人じゃない。
そんな気がして、とてもうれしかった。

15分後、ようやく病院に到着した。
停車地点から病院までは、少し距離があり、細い道が続いていた。
周りは街灯がほとんどなく、かなり暗かった。

『お父さんが無事なことを祈ってますよ。』

その言葉を残して、タクシーは走り去っていった。

タクシーが走り去っていくと。その暗さは一層増した。
一人になった瞬間、急に不安な気持ちが強くなった。

親父が死んだらどうしよう・・・

そんな悪いことしか浮かんでこなかった。
周りの暗さが、さらに不安を強くさせた。

できれば、タクシーの運転手に病院まで一緒について来てほしかった。
一人になりたくなかった。

でも、見ず知らずの人にそんなことは頼めなかった。

そんなことを思い、震えながら暗い夜道を歩き始めた。

2,3歩進んだときだっただろうか・・・
急に周りが明るくなった。

街灯でも点いたのかな?

そう思って周りを見渡してみた。
すると、僕の後ろで
さっきのタクシーがライトを照らしてくれていた。

走り去ったと思ってたけど、道を照らすために
方向転換をし、戻ってきてくれたのだった。

そして、笑顔で僕を見送ってくれていた。

『大丈夫だよ。きっとお父さんは元気になる。』

詳しい事情は知らない運転手だけど、
まるでそんな風に勇気づけてくれているようだった。

ついさっき、初めて会ったばかりなのに・・・。

涙があふれて止まらなかった。
僕は深くお辞儀をして、病院へと向かった。
タクシーがライトで照らす明るい道を歩いて・・・。

そのおかげで不安な気持ちも消え去り
落ち着いて親父がいる病室へ入ることができた。

親父は、過労からのストレスが原因だったようだ。
命に別状はなく、1ヶ月の入院のあと、
今は元気に生活している。

あの時、不安な気持ちを消し去ってくれた運転手さん
あんなに優しくしてくださって
本当にありがとうございました。

人の温かさに触れた大切な一日だった。

辛い時だからこそ感じられる人の優しさ。

そして・・・

全くの他人へも手を差し伸べられる心の広さ。
そんなことを教わった一生忘れられない出来事だった。

「見ず知らずの人」の人気記事はこちら

過去の記事を全て一気に読みたい

全記事一覧はこちら

Facebookでファンを募集しています。

いいね!を押して頂けると、今悩んでいる人にあなたのメッセージがそれとなく伝わります。

コメント

  • トラックバックは利用できません。
  • コメント (0)
  1. この記事へのコメントはありません。

CAPTCHA


カテゴリー

ページ上部へ戻る