
その新婦はお父さんのことがとても大好きなようで、
一足先にあげた海外の結婚式でお父さんとバージンロードを歩いた時の
幸せだって気持ちを嬉しそうに何度も何度もお話してくださいました。
そこでその披露宴では、通常はやらないのですが、お父様から新婦へ手紙を読む事を設けました。
愛する娘に伝えたい、素直な気持ちを手紙に綴ってもらうようお父様にお願いしたところ、
伝えたいことが沢山ありすぎて、うまくまとめられるかな?と、言いながら、快く受けていただきました。
そして迎えた披露宴当日、お父様の席に伺い、お手紙書いていただけましたか?と尋ねると、
お父様が嬉しそうに、胸ポケットから取り出したのはくしゃくしゃの紙。
それは何度も何度も書き直し、読み返した後のある紙。しわしわになったお手紙でした。
披露宴が終盤にさしかかり、本来なら花嫁のお手紙の時間。
そこで、新婦からのお手紙の前にお父様から手紙を読んでもらいました。
「娘が生まれるとわかった瞬間、嬉しくて嬉しくて、幼い頃はおてんばだった君。
怪我をしないか毎日、心配になって。そんな愛のある毎日から始まりました。」
そして、その中には、こんなエピソードが。
「君は小学生の頃、いじめにあっていましたね。
毎日、泣きながらから帰ってくる君。学校に行きたくないとだだをこねる君。厳しく叱っていた時もありましたね。
けれど、君が眠りに付いた時、きびしく叱ってしまったことを後悔して、君の寝顔を眺めていました。
この子だけは、何があっても守り抜かなければ。どんなことがあっても。自分はこの子の味方でいよう。
そう誓い、寝ている君の頬をなでるしかなかった。私にはできなかった。」
このエピソードがお父様から話された瞬間、新婦はせきを切ったように顔を覆って涙されました。
続いて涙をながしながら花嫁が手紙を読む番、その手紙の中にはこんなことが書かれていたのです。
「私は小学生の頃、いじめにあっていました。
辛くて辛くて、学校に行きたくなくて。
そうお父さんに伝えると、厳しく怒られたこともありました。
でも泣きながら私が布団をかぶっていると、
お父さんは私の隣にそっときて私のほっぺたを何度も撫でてくれましたね。
その手が暖かくて、やさしくて、とても安心して、明日もがんばろう。そう思いました。
お父さんはきっと私が寝ていると思っていただろうけど。
私は、毎晩起きていたんですよ。
お父さん、ありがとう。